その瞳に写る頃


「今日、朝ごはんなんだった? わたしは、昨日の夕飯の残りのマカロニコロッケ」

「俺は……」

なんだっけ、と高本くんは呟いた。

「ああそうだ。玉子焼きとひじきの煮物、もやしの味噌汁」

「おお、いいねえ。あっ。でもさ、味噌汁にもやし入ってると中華麺欲しくならない?」

「ああ……そうかな。あまり感じたことない」

「そうなんだあ。必ず中華麺欲するわたしとしては、なんかちょっと羨ましい」

「ああ、でもそうか。味噌ラーメン、もやし入ってるもんね」

「そうなんだよ。もう、もやしの入った味噌汁を飲まされるなんて、わたしからすれば絶対麺は食べるなって言われながら味噌ラーメンのスープ飲んでるような感じでさ」

「ああ、わからなくもないなあ」

久しぶりにラーメン食べたくなってきた、と高本くんは笑った。


「夜は何時に寝た? ていうか、いつも何時に寝てる?」

「いつも、絵を描くのに満足したらかな。ほら、宿題やって疲れきるでしょう? それを癒やしてから、やっと眠るっていうのが。昨日は十時頃だったかな」

「へええ。早いんだね。わたしはいつも十一時は普通に過ぎてるよ。早くても十二時過ぎくらいで」

「ええ……でも、それでは朝起きられなくない?」

「起きられない起きられない」

わたしは顔の前で手をひらひらと動かした。

「今日はたまたま早く目覚めたけど、ほとんど毎日お母さんに起こされてる。それも、ご飯が冷めるってね」

「なんか、その後トースト咥えて通学路にある曲がり角で素敵な異性とぶつかりそうな目覚めだね」

「ああ、お怪我ありませんかの声に顔上げて、相手の美貌が飛び込んできて一目惚れ――ってね」

ちょっと古いねと笑うと、最近のはそういう感じじゃないの、と高本くんは笑った。