父は夕食前の宣言通り、食事を済ませるとすぐに作業に取り掛かった。
「お父さんって地味になんでもできるよね」
わたしは簡単そうに縫い針へ糸を通す父の隣に座った。
「地味に……?」
「うん。照明の取り替えも早いし、機械の調子が悪くなったときも分解して確かに直しちゃうし。
特に覚えてるのは、若い頃、マッチ棒を組んで車かなんかを作っちゃったって話と、マイクロピースのパズルを数日で完成させちゃったって話。
本当、広く浅くいろいろできるよね」
「なんとなく褒められてる感覚が薄れてきたけど、嬉しいよ」
「そういえばさ、マッチ棒の車は最後燃やしちゃったって言ってたけど、なんでそんなもったいないことしたの?」
「なにか起こって火事にでもなったらと思ったら怖くなってね。綿棒とか爪楊枝で作ればよかったよ」
「綿棒はわかるけど爪楊枝はもっと大変なんじゃないの?」
よしできた、と父はジャージを広げた。
お前もかよ、話を聞け、と腹の中で呟く。



