母の言った通り、父は翌日、定時に上がったと予測できる時間に帰宅した。
母がキャベツを千切りにしているのを眺めていると、父の車のドアの音がした。
「お父さん帰ってきた?」
「出迎えてあげたら?」
もちろん、と頷き、わたしは台所とリビングを飛び出した。
「お帰りなさいませ、父上」
「おう、さくら」
ただいま、と両手を広げる父に、一瞬躊躇ったがそっと抱きついた。
これを拒めば、ジャージの修復を拒まれる可能性があるからだ。
「お父さん無事でよかったよ」
「さくらもな」
少し耐えたあと、わたしは父から離れた。
「あのね、お父さん。ちょっとお願いしたいことがあるの」
「おう、なんだい? さくらのためならなんでもするよ。だけどちょっと待ってて」
先に着替えてくる、と宣言し、父は二階の自室へ向かった。
わたしはリビングに戻り、すぐそばのダイニングチェアに腰掛けた。



