教室に入ると、わたしは一つの席を確認した。
高本 秀のものだ。
もしも彼がまだ登校していなければ、後に彼が登校してきた際にさり気なく声を掛けることも不可能ではないが――という淡い期待は、簡単に打ち消された。
高本 秀は、すでに自席で鉛筆を握っていた。
あの芯はなにを作っているのだろうと考える。
ふと、視界がショウゾウの顔で埋め尽くされた。
「もしかしてなのだけれどもサクゾウくん、君……我ら県立浅葱(あさぎ)東高等学校二年二組に属するナンバーエイティーン、ミスター シュウ タカモトに恋をしているのかい?」
ショウゾウは途中から息継ぎもせず、早口で抑揚のない声を続けた。
「別にそんなんじゃないよ」
「ふうん?」
ショウゾウは腕を組み、怪しいとでも言いたげな表情でわたしを見る。
「まあ」と感情のない声を出すと同時に、表情とともに腕を解いた。
「わたしはやめておいた方がいいんじゃないかとしか言えないけどね」



