その瞳に写る頃


たまごはんが盛られた皿を前に、わたしは「いただきます」と母と声を合わせた。

「ああそうだ、お母さん?」

フォークを手に持ち、たまごはんに手を付ける前に言った。

「なあに?」

「自分の、すっごく優れている部分に気づかない人って、どんな人だと思う?」

「え?」

「いやだから、例えばその……ものすっごく綺麗な顔立ちの女性――いや男性でもいいんだけど、とにかくものすごく顔立ちの綺麗な人がいたとするじゃない?」

うん、と母は相槌を打った。

「で、その人はまあ、実際にものすごく綺麗な顔立ちをしてるわけだからさ、いろんな人に綺麗な顔してるよねえ、とか、本当に美人だよねえ、とか言われるじゃない?」

母はたまごはんを口に運び、ちょっと焼きすぎたな、と首を傾げた。

「で、それなのに、その本人はまったくその自覚がない、みたいな。

むしろ、自分はまったく容姿が優れていないと思ってる、みたいな。そういう場合、その人はどんな状態……というか。なんだと思う?」

「うーん……」

母はフォークを置き、腕を組んだ。