「美澄さんは? チューリップ以外に好きな花ないの?」

「花ねえ……。わたし、あんまり詳しくなくてさ。好きな花……ひまわりかなあ。夏が好きだからさ」

「美澄さん夏好きなんだ」

「うん。高本くんは?」

「俺はない」

「えっ、どういうこと?」

わたしは笑いながら言った。

「いや、いつでも嫌いではないかなあと」

「ああ、そういうこと。じゃあ、特に好きな季節は?」

「冬かな」

高本くんは少しの沈黙のあとに答えた。

「冬かあ。焼き芋好きなんだよなあ、わたし。寒い外で食べる焼き芋なんか最高じゃない?」

「ああ、小さい頃よく食べた。未だに使ってる、当時からちょっと古いトースターで焼いてもらって、わざわざこっちで食べてた」

「うわあ、なにそれ最高なやつじゃん」

わたしは言いながら、口元を両手で覆った。

「ただ毎回、剥いた皮をその辺に残して母親に怒られてた」

「ああ、綺麗好きなんだ?」

「そう……なのかなあ?」

いやわたしはわからないよと首を振ると、高本くんはそうだよねと笑った。

「まあ、別に綺麗好きというわけでもないんじゃない? 運んでくる間に落とした箸、普通に使ってるし」

「あ、それ美澄家レベルだ」

まあ我が家の場合は落とした箸を問題ないと言って娘に使わせちゃうからそこまでではないんだろうけど、とは腹の中で続けた。