「ていうかショウゾウ、久しぶりじゃん」

「本当だね。サクゾウくん全然連絡くれないんだもん。翔子、寂しかったわ」

「いやあ、特に大きな出来事もなかったし。ていうか、クラスが違うと結構会わなくなるもんなんだね」

わたしは下駄箱から靴を取り出し、廊下の外へ放った。さっさと足を突っ込む。

「そんなことよりだよサクゾウ。高本くんと随分仲よさげじゃない?」

いつからよ、とショウゾウはからかうように言った。

「だからさっきも言ったように、友達だからね。いつから……か。去年かな」

「ふうん……」

楽しそうでいいわね、とでも言いそうに、ショウゾウはローファーを履いたつま先を下のタイルに何度かぶつけた。


「で、どうなのよ? このままさらに仲よくなって、ギューッとかチューッとかするような、いわゆる恋人とかいう仲になっちゃったりする可能性は感じちゃったりしてるわけ?」

昇降口を出た直後、ショウゾウは顔を覗き込んできた。

「ショウゾウくん、あなたは近くに住む女の子が気になって仕方ない近所のおばさんですか?」

「あらあら嫌だ、ピッチピチの女子高生に向かっておばさんとは失敬ね。精神年齢が実年齢を上回った、落ち着いた少女と言ってくれないかしら」

「言ってくれないですね。落ち着いた様子が見受けられないので」

本当に失礼しちゃう、とショウゾウは口を尖らせた。

「ああ、最後に」

校門を出たところで、わたしは言った。

「高本くんと友達以上の関係になることはありえません。以上」

気をつけてね、とショウゾウの肩を叩き、彼女の返事を待つ前に歩みを再開した。