「すいません....自分が...自分が本当に情けなくって....」


佐々木は缶を地面に置くと、両手で自分の顔を覆った。指の間から、先程枯れる勢いで流していた涙を流し、地面に円を描くように染み渡る。


「千澤さんは....正しいことを言ってます....間違ってるのは私なんです....
私の言ってることは....自分の身を安全に守るんじゃない...自分の身だけを思って逃げることなんです....」


「そ、そんな」


「いいんです....私....今更気付いたんです....本当に馬鹿ですよね....
私、襲われた時。絶望しました...それと同時に諦めてました....
だけど、千澤さんは違った...千澤さんは最後まで抵抗して...それに........」


「....それに?」


「流してる涙が違うように見えたんです...私のような諦めて、生きる道を失ったような感じじゃなくて....絶望より後悔が先走っているっていうか....その後悔も....
とにかく....私には綺麗に見えたんです。千澤の涙が....」


依奈は理解出来ず、頭をかいて悩んでいた。自分だけが分からない議論のように、ちっとも理解することが出来なかった。


「千澤さんと私の涙がなんで違うか....今わかりました。立ち向かおうとしてる人とそうでない人。きっと....それだと思うんです。」