「だ、誰?誰かいるの?」
恐る恐る見ている謎の人物に声をかけた。
数秒後、ガタンっと目の前のポリバケツが揺れた。
依奈は身体を跳ねさせ、硬直した。そして依奈の脳裏の奥底の恐怖、今日の美苗との思い出で忘れかけてくれていた恐怖が浮かんできた。
あの目、赤い血、思い出すだけで気を失いそうな圧迫感。依奈は泣き目になりながら、ジリジリと退いていた。
ガタンッ!!
ポリバケツが音を立てて倒れた。中に入っていたゴミが流れ、床へ散らばった。
そしてバケツの中から出てきたのは、ただの野良猫だった。
「え?....ね、猫?」
「ニャー...」
依奈に可愛らしい鳴き声を顔を見せ、地面に散らばるゴミの中に混じっている猫の空き缶をぺろぺろと舐め始めた。
「び...ビックリさせないでよね...もぉ〜。」
依奈は抜けそうな腰を気合いで支えながら早歩きで裏路地を抜けた。そして目の前には裏路地には照られ、夕方の日差しが安心を教えてくれた。
だが、依奈はそれでもまだ安心できず、途中交差点もあったが、車も見ずに早歩きで通り抜けた。
ようやく目の前に公園の入り口が薄らと見えて、依奈は疲れながらもホッと安堵の息を零す。



