考えれば考える程、当たる壁は高かった。どこを見ても傷穴一つ見ることが出来ない、断崖絶壁。
依奈は絶対に抜け出せない密室に閉じ込められたかのような感覚になり、先程までのカラオケのテンションは皆無だった。
数分して、美苗はカラオケボックスへと戻ってきた。その時、依奈が帰り支度をしている事に美苗はいち早く気付く。
「え?もう帰る?」
「うん....もう少しだけ一人で考えてみたいんだ。今後の事とか含めて。」
「それだったら尚更私がいるよ。二人で一緒に考えようよ。」
「ごめん美苗。美苗に相談するのは自分の中で整理出来てからにしたいんだ。」
そう言い切ると美苗は一回頷くと、依奈と同様に帰り支度を始めた。
「分かったよ。そんなに言うなら依奈の言う通りにするよ。でも、その代わりに整理出来たら私に絶対報告ね!もし、報告しないで一人で抱え込んでたらビンタだから!」
「...うん、ありがとね?美苗。」
「いいよいいよ〜。あっ、途中まで送るよ。」
依奈と美苗、二人は揃ってカラオケ店を出た。
外は既に夕方、綺麗なオレンジ色が街を照らし、どこか温かい感じになる。ふと、依奈は昔のいじめられていた章太とまだ強気だった自分を思い出す。
依奈は懐かしく苦い思い出に、また目がうるうるするのが感覚で分かった。



