「....上手くないよ?私...」
「それはこれから私が判断しまぁ〜す!」
それから何時間歌ったか忘れる程、ここ最近の出来事を忘れるほどに依奈は歌った。忘れてはいけないのは頭の中では十分に理解していた。
だが、美苗の優しさが依奈の鎖を解き解き放ってくれた。
依奈は心の底から楽しんだ。そして美苗は歌がド下手くそだった。
二人がソファーに腰を下ろしたのは時間よりも体力が無くなったからだった。
いつもよりソファーが座り心地よく感じ、一気に寝てしまいそうになった。
「ふぅ〜疲れた〜。依奈上手いじゃん!普通に歌手になれるって絶対!」
「ほ、本当に?そんな事人に言われたことないから....どうなんだろ?」
「いやいや、自信持ちなって!めちゃくちゃ上手いから!一緒に歌っててうっとりきちゃったもん。」
「それより美苗、話がある人っていつ来るの?結構時間経ったんじゃない?」
美苗は震える手でスマホを取って画面を表示させ、目を丸くした。
「え?嘘、もうこんな時間?本当に結構歌ったね〜。でも、あともう少しだからそれまで何曲か歌おうよ〜。」
「あっ、ごめん....ちょっと私トイレに...」
「あ!じゃあ私も行くよ〜。」



