一人で抱え込まないで。自分の奥底にあるものを私にぶつけて。お願い依奈。」


依奈は目がじわっと熱くなるのを感じた。章太を見捨てた日から凍り付いた心を溶かしてくれるような美苗の言葉は、依奈にとって嬉しくもあり悲しくもあった。


私も....美苗みたいな人になれてたら章ちゃんは...


「はは....凄いね美苗は。そんな事そうそう言えないよ....」


「私は私が言いたいことを言っただけだよ。じゃあ依奈も言ってよ。不平等じゃ〜ん。」


「....分かったよ。笑わないでよね?」


依奈は美苗の優しさに甘え、昨夜の事を伝えた。




話し終わると、美苗は考え込むように手を組んだ。


「うーん...それって重信先生なのかな?その依奈を脅かしにきた幽霊って。」


「分からない...重信先生がいつ自殺したかによると思うけど...」


「でも重信先生じゃないかもね。もし、先生だったら依奈じゃなくて真っ先に京吾君達の方へ行くもん。言っちゃえば元凶でしょ?
....やっぱりさ、それって章太君じゃ」


「章ちゃんの訳ない!!」


依奈は叫ぶように声を大きくし、バッと立ち上がった。美苗はそんな依奈を目を丸くして見て、依奈はハッとして静かに座った。


「ご、ごめん....だけど、あれは章ちゃんなんかじゃない....」


「....どうしてそう思うの?」