「ひっ!!だ、誰か助けてぇ!!お願い!!誰かッ!!」


依奈は四つん這いになりながら、部屋のドアから脱出しようとしたが、部屋のドアは鍵がかかっていないのに開かなかった。というより誰かに抑えられている感覚に近かった。


「な、何で!?誰なの!?お願い!早く開けてぇ!!」


必死に助けを乞うがドアの重さは変わらない。本棚とタンスの揺れがどんどん大きくなり、その迫力に依奈は押し潰されそうになった。
もう限界と感じた途端、本棚とタンスはピタッと止まり、辺りには静寂が訪れた。


「はぁ...はぁ....なんなの本当に...もう無理...」


依奈は弱々しく独り言を吐くと、ドアに再び力を入れた。大人しくなったといえ、しばらく部屋にはいたくないと思ったからだ。
ドアは重いが、さっきのような壁を押しているような感覚ではなく、力を入れればゆっくりと開くくらいまで弱まった。

依奈はドアを開けるため全力を出すと、ようやく薄暗い外の廊下が隙間程度だが見えるくらいまで開いた。


「も、もう少し....あとちょっとで...」


ピチャ...ピチャ....


その音で依奈の動きが止まる。その音は自分の目の前で聞こえていた。
目線を落とすと、ドアの向こうで水溜まりが出来ていた。部屋の明かりで鮮明に見える。