白い玉の右斜め下から黒い何かが浮き出た。それは黒いのではなく、赤黒かった。
そして黒い球体はよくよく見ると、微妙にブルブル動いていて、白い玉は端から赤黒い線が中心に向かって伸びていく。
依奈はその白い玉の正体がわかった。
わかった途端、依奈はガタガタ震え、心拍数が急激に上がった。
「ひ、ひやぁぁぁ!!」
そんな情けない声を上げ、依奈は後ろへ倒れた。完璧に腰を抜かして、恐怖で頭がいっぱいだった。
だって....ありえない!あるわけがない!あんな隙間に!あんな小さい隙間に!
「今の...目玉?人の....目?」
依奈が目にしたのは目玉だった。赤黒い涙を流しながらこちらを見ていた目玉、そしてこの視線の正体はこの目玉だと確信した。
誰かが見てる!あんな教科書一冊入るかどうかの小さい隙間なのに!あんな所、人が入れるわけないのに!!
そう思っていると、本棚とタンスが急に揺れ始めた。宙に浮いている電気すら揺れてないのに、本棚とタンスが独立して揺れていた。
ガダガダガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ
それは時間と共に次第に大きなり、今にも倒れてきそうな勢いだった。



