「花梨ちゃん。もうやめなさい。怪我をしてしまう。」
「そうだよ花梨ちゃん。君は何も悪くないんだから謝る必要は無い。そんな事したら善子もきっと悲しむ。」
そう声を掛けられても花梨は頭を付けるのをやめなかった。
流石にまずいと親戚内でも若い男の人が力づくで花梨を床からひっぺがした。
花梨は涙で顔がグシャグシャだった。まるでワガママを言って親に怒られた子供のように。依奈はそんな母親に衝撃を受けた。
どんな時にでも優しく、どこか大人の余裕を持っていた母親がここまで取り乱すのは初めて見たからだ。
「やめてください!私が悪いんです!!善子もきっと私を憎んでる!
私が!私がぁ!!うう...」
花梨は男性に捕まりながら、泣き叫んだ。その状況に親戚の誰もが涙目で苦しそうな顔を作る。
依奈は腹の中でドス黒い何かで浸食されていく。今見ているのは自分がやってしまったことの着地点、地獄だと依奈は感じた。
結局花梨はしばらく帰れそうもなく、親戚の一人が依奈を家へ送ってってくれた。
そこから依奈は風呂に入り、食べるものがないので夕食はお菓子で済ました。その間、依奈には何の感情も湧かなかった。ただ、何も考えずに行動した。心の中はもう空っぽだった。



