「そうよ。命乞いをどんどんして。そして後悔して死になさい。あの子を見捨てたことをね!」


「お、お願いします...章太を...章太をイジメていた犯人を教えます...だから...助けて...」


善子はこの言葉に反応した。善子のこの犯行はあくまで自分の推測、確信的なものは無かったので当然食い付いた。


「誰!?あの子を死に追いやったのは!!教えなさい!!」


「そ、それは...あ、アイツです....」


京吾は来希を指さした。来希は顔を青ざめ、後退りをする。自分が売られたということを瞬時に理解し、絶望する。


「アイツが章太をイジメてた....アイツは俺の弱みを握ってて....それで....」


善子はゆっくりと京吾の指差す方向を見て、来希を凄い形相で睨み付けた。憎しみという憎しみが沸き起こり、手に更に力が入る。


「あんたが....あんたが章太を」


その時、善子が来希に全意識向けている時、京吾は後ろへ飛んだ。包丁は京吾の腹から抜け、その事に善子はワンテンポ遅れて気が付いた。
京吾は善子がいきなりのことで動揺している隙をつき、離れた間合いを直ぐに狭めた。

そして、包丁を握りしめている善子の手を片手で持って、逆に善子の腹に刺した。もう片手で善子の背中を抑え、更に奥へ刺していく。


「ガッ!....ゴフッ....」


善子の吐血は京吾の背中あたりを血に染めた。一瞬で展開されていく状況に当然二人は頭が追い付かず、棒立ちして見守っていた。