章太は押し殺していた自分の感情が少しだけ漏れた。依奈の笑顔と言葉で、絶対に目の前ではしないと封印していた鍵が解かれた。

章太は涙を流しながら、依奈に笑い返した。


「あはは...残念だなぁ〜....僕、嫉妬しちゃうよ....」


二人はお互い笑いながら、切なそうに見詰めていた。だが、言葉はもう交わさなかった。交わさなくても全て分かっているから。

章太は片手を顔付近まで上げて、掌を向けながら左右にゆっくりと振った。


「....じゃあねちぃちゃん。また今度。」


「うん。じゃあね章ちゃん。」


依奈が振り返すと、章太はカクンと頭を下げた。章太の身体が善子のように、光の玉となって分裂していく。そしてそれは依奈の目の前を通り過ぎ、上の方へと消えていった。

光の玉が消えていくと、そこには頭を下げている静華の姿があった。
静華は目を開くと、章太が流していた涙を拭いた。


「終わったよ...静華。全部....全部終わった。」


「そう....そうね。章太君のオーラはもうない。本当に逝ってしまったのね。」


「うん。でも、章ちゃんと会話出来て....本当に良かった。ありがとう、静華。」


静華は小さく頷くと深呼吸をした。そして、なぜだかまるで小馬鹿にしているかのように口角を上げた。


「それにしても依奈って大胆だったのね。キスしちゃうなんて...」


「え!?え?嘘でしょ!?え?全部知ってたの?...」