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警察のサイレントと男達の怒りの声は夜空に消えていく。肌寒い風を和らげるかのように、依奈は婦人警官に渡された温かいココアをゆっくりと身体の中へ入れていく。
ココアの熱が身体の芯まで届き、依奈は何故か安心感に包まれた。まるで、ココアが自分を慰めてくれているかのような感じがした。
ココアを味わっていると、静華が同じくココアの入った紙コップを持って隣に腰をかけた。
「....まさか静華が空手をやってたなんて知らなかったよ。」
「まぁ言ってなかったしね...中学生の時に何気なく部活で入って、高校でも道場とかで続けてたってだけ。どうだった?私の戦いっぷり。もしかして惚れちゃったかしら?」
「あと少しだったかな。でも、本当にスカッとしたし、かっこよかったよ。静華。」
静華はココアのせいか依奈の言葉のせいか、頬を赤らめながらフッと笑いをこぼした。
「それは残念ね....もっと修練が必要ってことね...」
「でも、あんなに凄い空手が出来るのに何で享吾の時には使わなかったの?」
「私は組手が嫌いで、型専門みたいな所があるの。あの時はただでさえ冷静さにかけていたし、もし空手を使っていたとしても結果は同じだわ。
それに、私って案外脆いものよ?」
静華は靴を脱いで、靴下をまくって依奈に足の甲を見せた。足の甲は自分に耐えられない衝撃に怒っているかのように、赤く膨れ上がっていた。



