怨返し─赦されない私の罪─


美苗は静華との間合いを詰めると、バタフライナイフを振り上げ、勢いよく振り下ろした。美苗は静華の頭にバタフライナイフが刺さり、苦痛に顔を歪ませる静華の顔が浮かんだ。

だが、実際は静華は振り下がってくる手の方を片手で払った。
よろけた美苗の懐に一気に近寄ると、もう片方の腕の肘を鳩尾に突き当てた。

あまりにも綺麗な動きに依奈は開いた口が塞がらず、美苗は目を見開いて驚愕し悶絶した。


「がっ!...ゲボゲボッ!....な、なにが...」


「あら言ってなかったかしら?私って空手をちょっとばかりかじってるの。先に言っておいた方が良かったわね。あ、因みにその一撃はあなたに対する個人的な怒りだから。」


静華はしれっとそんな事を言うと、反比例のように美苗の頭は熱で満ちていく。鼻息を荒らしながら、めげずにもう一度刺しに向かった。
そんな美苗に静華は綺麗な曲線を描いた上段蹴りを頭に当てた。鞭で叩いたかのような音がし、美苗は頭を抑えながらよろけた。


「そしてそれは依奈の分。...そして最後に....」


美苗は意識が保てていないのか、ググッと頭を徐々に下げて行った。静華の丁度へそ辺りまで頭が下がると、静華は反対側を向いて、腰を限界まで捻った。


「最後に...あなた達の自己満足のせいで死んでしまった章太君、その母善子さん...そして私の親友、裕子の分よ!!!」