注射器が近付いてくる。いつもの依奈なら泣き叫びながらも抵抗するが、今となっては別になんとも思っていなかった。

やっぱり私は生きちゃいけなかったんだ。
章ちゃんを裏切ったあの日から....生きて罪を償うなんてそんな出来すぎた話は無かった。
章ちゃんの死の償いは私の死がやっぱり必要だった...

依奈は目を瞑り、これから起きる事を受け入れようと考えた。全ては章太への罪滅ぼし、そう思えば気持ちが楽になっていた。


「ここまで考えが似てるなんてね。始めてみるわ、こんなクズの集団。ねぇ依奈、やっぱり私と付き合わない?」


聞き覚えのある声が倉庫内に響き渡った。依奈含め、全員がその声の方向に目線を向けた。
いつからいたのか、奥の物置の所で静華が腕組をして立っていた。


「あー!静華ちゃんじゃん!良かった〜。あんたにもお礼をしないとって考えてたんだ〜。手間省けたよぉ〜。」


跳ねて喜ぶ美苗を見て、竜は大きくため息を吐きながら立ち上がった。


「そこじゃねぇだろ....どっから入ってきた?見張りの二人は何してんだ。」


「正面の二人はまだ呑気に煙草を吸ってるんじゃないかしら?裏手に取り外せる壁があったの気が付かなかったの?初めて来る私でも見つけられたんだけど。」