依奈は言い放った後、ハッと正気になった。依奈は以前、友達には時間の多さは関係ないと静華に言った。それは本心だった。だが、勢いで言ってしまった。いくら焦っているとはいえ、嘘をつかれたとはいえ、静華を突き飛ばすような発言をした依奈は後悔した。
案の定、静華は依奈の言葉がショックなのか、涙目になって下を向いた。依奈も心がチクチク刺さるが、その場から逃げ出したい気持ちが先走ったのか、謝罪もしようとせず、歩き出す。
だが、静華は依奈の手を離さなかった。弱い力で依奈の手を掴んでいた。
「お願い....一生の...お願いだから....」
泣き声なのがまた依奈の心に傷が付いた。足を止めたかった。謝罪をしたかった。抱き締めて仲直りしたい。
だが、美苗の事を思うとそれをしている時間はない。
依奈は小さく見える静華の手を振り払い、走っていった。
「う...うぅ....ぅぅぅぅ...」
小さくなっていく依奈の背中を見ていた静華は、孤独に泣いていた。



