...出掛けてるのかな?でも、車はあるし...


依奈はもう一度押すがやはり誰も出てこない。変に思って依奈はドアの引手を引いた。
すると、思ったよりすんなりドアは開いた。

鍵がかかっていないことに、依奈は嫌な予感しか感じられない。
依奈は慌てて靴を脱ぎ、家の中に入った。


「善子さん!?善子さん!居ますか!?返事をして下さい!!」


そう呼び掛けるが待ち受けるのは静寂だけ。依奈は冷や汗がブワッと湧き出た。


ま、まさか...章ちゃんの後を追って....


そんな嫌な想像が頭に過ぎると、何か物音が聞こえた。リビングの方からだった。
依奈はゆっくりと足を進ませ、リビングのドアを開けた。

そこには昔のような清潔感があったリビングはなく、荒れているリビングに変わっていた。物は乱暴に落とされ、花瓶は割れている。テレビも画面に大きなヒビがありとても映像を通常に流せるとは思えない。


「こ、これは?」


「依奈...ちゃんかい?」


そう声をかけられ、依奈はリビングから右の方へ目線を逸らすと、章太の母親が椅子に座っていた。

グシャグシャの髪に隈が出来ていて、前のような綺麗な女性という印象からは信じられない程劣化している。


「は、はい。お久しぶりです....」