いつもの自分の部屋、章太が襲いかかった時から怖くて入るのを躊躇う自分の部屋。だが、今となっては全く躊躇はしなかった。

いつもの様に部屋に入り、依奈は部屋の中心にある丸机に、お茶の入ったコップをゆっくりと置いた。



「ありがとう...」


静華はそのコップを手に取り、スっと口に注いだ。私服は相変わらずシンプルで似合っているが、依奈は額にある包帯を見ると胸が痛くなった。


「静華、大丈夫なの?頭。」


「えぇ。かすってただけだったらしいから、問題無いそうよ。私としては、痕に残るかどうかが心配だけどね。」


依奈は正座をして座っている静華に対立するように座って、自分もお茶を啜った。


結局、あの日の出来事は全て享吾による犯行で幕を閉じた。裕子がグジャグシャになって発見され、その遺体からは例の金槌の痕、そしてその金槌に付着している血と指紋で享吾の犯行は明らか。
静華も依奈も殴られた形跡があるので、疑いの目はなかった。

犯行は清都、来希が殺されたのは依奈と裕子だと思ってのこととされているらしい。

美苗はあれ以来連絡を交わしていない。依奈は何度もメールを送ったが既読すらつかなかった。警察が言うには精神的なショックが大きいと聞いていた。