「俺達はいつも通りに体育館裏でたむろしてたんだ。そこで、その日はイジメのターゲットを決めてたんだよ。クラスのヤツらの名前と顔を浮かばせて、最初のターゲットを選んでた。
そして、第一候補。つまり最初の犠牲者はお前に決まったんだよ。
俺達はお前を連れてこようと立ち上がった時にな?どこから聞いてたか分かんねぇけど、章太が飛び出てきていきなり土下座するとよ?」
"僕を....僕をターゲットにして下さい。千澤には...手を出すことだけはやめてください。お願いします"
「え?....嘘...」
「嘘じゃねぇよ。あいつはお前の名前をチラつかせるだけで、どんな事にも耐えて従った。本当に健気だよなぁ?ゴミながら泣いちゃう展開だ。自分を犠牲にしてまでも他人を守ろうとするんだからなぁ?
そして、お前も酷いやつだなぁ?守ってもらってるくせに見捨てんだもんなぁ?
....だから章太は俺には手を出せない。章太はお前を殺せないんだよ千澤ちゃん。」
依奈は目の前に立っている章太に目線を向けた。無表情の章太。
生前の章太を思い浮かび、そしてイジメを受けていた章太を思い出す。自分が章太を初めて見捨ててしまった時のことを鮮明に思い出す。
そして、いつの日か高校入る前の章太の部屋でのやり取りも思い出す。



