依奈と裕子はひたすら走った。東崖山の麓にある東崖寺まで。
携帯で時間を確認しながらも、その度に焦り冷や汗をかきながらも走り続けた。

章太の家から東崖寺までは走って二、三十分程度の距離。だが、一刻を争うその時にその時間はあまりにも大きすぎた。

昨日の清都の姿が美苗と被る。依奈は嫌な予感しかせず、半場泣きながら走っていた。


半分地点に差し掛かり、依奈は裕子の方を見てみると、今すぐにでも吐いてしまいそうなバテバテ状態だった。


「はぁ....はぁ...裕子、大丈夫?無理しないで。」


「はぁ、はぁ...だ、大丈夫....です...このくらい...っぷ...」


無理しているのは明らかだった。顔色は悪く、足も少し震えているように見えた。普段から走るようなことは一切していなく、体育の授業でもバテてるケースをよく見たのを依奈は思い出した。


「裕子、私先に行ってるから。また何かあったらメールで連絡するから、自分のペースで向かってきてね。着いてから倒れるようじゃ、逆に来た意味無くなっちゃうから。」



「は、はいぃ....分かりました...すいません....」


そう言うと、裕子は足を徐々に遅くしていき、近くの電柱に手をかけてゼェゼェと息を荒らしていた。
依奈も結構体力の限界は近かったが、襲われている美苗のことを考えると、立ち止まる気にはなれなかった。