依奈達は階段を上がり、すぐ左手にある部屋に入った。章太の部屋だった。

部屋に入ると依奈は思い出した。章太が高校に入る前のあの会話、章太が自分で母親を説得したあの日の事を。
依奈は自然に涙を零していた。懐かしい感情になり、ジーンと鼻が熱くなっていた。


「...大丈夫ですか?」


「うん、大丈夫。ちょっと思い出に浸ってただけ。....時間はないし、早く探してみよう。」


二人は部屋の隅から隅へと探した。感覚では分からなくても、もしかしたらという意味で呪いの根源の候補になるものを集めて行った。

章太の筆記用具、依奈との写真、好きだった音楽プレイヤー、腕時計、こっそり集めていたお菓子の付属シール。

色々な物を見つけている内に、依奈は母親のような気分になった。


「章ちゃん....こんなのまだ持ってくれてたんだ...」


依奈が手にしているのは小さい木箱に入っていた、カサカサの泥団子だった。裕子はそれに気付いて、ひょこっと顔を覗かせた。


「何ですか?それ...ちょっと力加えたら崩れちゃいそうですけど....」


「これは章ちゃんと初めて遊んだ時のやつなんだ。うんと小さい時の話だけど、今でも覚えてる。私が友達の証って自信作の泥団子を作って渡したんだ。
...あの時の章ちゃん....嬉しそうだったな〜。」