その憎い顔にもう一度コンパスを刺そうとすると、事態を察した先生によって止められた。
放課後、享吾は父親と一緒に相手側の親と対立して話した。相手側の親は怒鳴り声を吐き散らかし、自分の父親は何度も頭を下げて謝った。家との違いっぷりに享吾は目を疑った。
案の定、家に帰るとすぐに父親の暴力が待っていた。普段は手を出さない顔にも暴力の手が及んだ。
「お前なんて事してくれてんだあぁ!!?これが仕事に影響したらどうしてくんだオラァ!!誰のおかげで飯を食べて来れてると思ってんだよ!!!」
父親の怒号の声の大きさが強くなる度に暴力も段々エスカレートしていった。顔を殴られ、投げ飛ばされ、腹を蹴りあげられ、享吾は全身ボロボロだった。
「はぁ....はぁ....次やったらただじゃおかねぇからな!!分かったな!!」
享吾は倒れながらも、声を出さずにゆっくりと頷いた。父親は舌打ちをし、台所でカップラーメンを作った。
享吾はなんとかして立ち上がり、ブルブルも震える足で玄関へと向かった。目に映ったのは鉄バット。昔、父親が野球を覚えさせようと享吾用に買ってくれていたバットだった。
享吾はその鉄バットを見つめ、手に取った。カップラーメンが出来上がり、苛立ちを隠しきれないまま、荒々しく麺を啜る音が台所から聞こえる。



