紙が破ける音が聞こえ、享吾は涙を流しながら二人の手を抜けようと必死にもがいた。
同時に思い出す。死んでしまった母親との思い出を。その本は母親が働いていた頃、ギリギリの生活をしていたにも関わらず買ってくれた本。
「享吾は....絶対に幸せになってね。ごめんね、こんな辛い思いさせちゃって。」
母親の言葉が聞こえる。そしてその思い出の結晶が破ける音も。ビリビリに破かれ、ガキ大将の仲間二人の手から逃れた時には本はボロボロだった。
「あ...あぁ....ううう...」
「何泣いてんだ?コイツ!あははは!おもしろ!あはははははは!!」
その時享吾の何かが頭で切れる音がした。筆記用具からコンパスを取り出し、ガキ大将を勢いで押し倒して、首目がけて何度も振り下ろす。
ガキ大将は必死に泣きながら抵抗するが、享吾は止まらなかった。手元が真っ赤になった時に、ようやく仲間二人が享吾を捕まえた。
享吾の首元へ回ってきた手を享吾は思いっきり噛んだ。噛まれた少年は泣き叫ぶが享吾はやめない。口の中が鉄の味で染まっていても、口の力は緩ませなかった。
もう一人の少年が殴ったりして止めようとし、数発食らった後、享吾はようやく噛むのをやめ、殴ってきた少年に飛びつき、頬をコンパスで突き抜いた。



