中々の年齢でのリストラは想像以上に父親の心を蝕んだ。そんな父親、家族を支えるべく母親は働きに出た。だが、稼ぎが言い訳ではなく、享吾は欲しい本があっても買ってくれなくなってきていた。
だが、享吾は小さかったが、家族の状況は把握していたため、それは我慢して既に読んだ本をひたすら読んでいた。そんな日々が続き、遂に母親は過労で倒れ、そのまま息を引き取った。
母親が死んだショックもあったのか、父親はようやく重い腰を上げ、職に就いた。だが、職場のストレスと母親の死で父親は精神的にも我慢の限界だった。
精神崩壊寸前のところで父親は解決方法を生み出した。それは暴力だった。我が子にカチンっとして、つい手を挙げてしまった時、彼は身体の中のストレスが発散された気分になった。
それからというもの、父親は変な難癖を付けては暴力を奮っていた。享吾は何がなにやら分からず、ただただうずくまって泣いていた。あんなに優しかった父親の豹変ぶりに享吾は心まで深く傷付いた。
だが、享吾に降りかかった不運はこれだけでは治まらなかった。今度は学校生活でのイジメだった。本ばかり読んで気に食わないという理不尽な理由で、竜がいない所でクラスのガキ大将に暴力を奮われていた。
家にも学校にも逃げ場は無かった。享吾の心はボロボロだった。だが、二つだけ救いがあった。



