病室を出るからに長口はイライラを隠せず、うろちょろ動き回っていた。


「おい。何イライラしてんだよ。」


「そりゃあイライラしてますよ。何なんですかあいつ。頷いたくせして全く会話出来なかったじゃないですか!それにうるせぇだの帰れだの...どうなってんすかあいつは!」


「流石に天下のいじめっ子も堪えたって事だろ。仲間が二人も殺されたんだ。まぁ、立場上あんまり言えないが....自業自得だな。だけど、だからといって見過ごす訳にはいかねぇ。それに、あの時って何だ?享吾について過去の事を探ってみてもいいかもな。数年前の復讐ってのもある。
もう一回署に戻って資料漁りすんぞ。」


二人が病院を去るのを享吾は窓から見ていた。そして何となく空を見上げ、本を見つめる。竜にお願いをして買ってきた本、結局殆ど読めていなかった。


あの時もそうだったなぁ〜。うん、全く持って読めなかった。.......


享吾は新品のような小説をジッと見つめながら、古き記憶を蘇らせた。




当時、享吾は小学生二年生だった。今とは違い、物静かな子でいつも本ばっかり読んでいた。幼馴染の竜が遊びに誘っても、あまり家から出ようとはしなく、仕方が無く竜も家の中で遊ぶこともしょっちゅうあった。

そんな物静かだった享吾が変わってしまったのは、ある事件がきっかけだった。父親が会社のリストラにあい、職を失ってしまったのだ。