中には数人の患者がいて、狙いの享吾は病室の奥でぼーっと景色を見つめていた。
ベットの上には読み途中の小説が置いてあった。


「...やぁ。西村....享吾君だよね?警察の丹沢だ。今日は話があってきたんだけど、大丈夫だよね?」


声をかけられた享吾はゆっくりと丹沢の方を向き、頷く。まるで生気のないロボットのような変わりようで、丹沢は少し衝撃を受けたが、何事も無かったように話を続けた。


「名倉 清都君の事は...知ってるよね?」


「.......あぁ...さっき聞いた。」


「彼含めこの連続殺人、次は君がターゲットになる可能性が高いんだ。何か気になる事とかないかい。些細な事でもいいんだ。教えてくれないかい。」


「...本....」


享吾は読み途中の小説を片手で持った。そしてページを開いて内容に目を通した。


「...読めないんだ。本。字と内容がまるで頭に入ってこない....これはあの時の...うん、あの時とまるで一緒だ。全く持って読めない。」


「そうか....犯人像で何か浮かぶ人物とかいるかな?」


「...知らねぇ。さっさと帰れ。喋ることは一切ない。」


「だが、このままだと君の命が」


「うるせえ。関係ねぇよ、うん。関係ねぇ。早く帰れ。」


丹沢の方は向かず、まるで本に話しかけているような感じをし、丹沢は渋々引き下がった。