「千澤さん....大丈夫ですか?」
「....うん....大丈夫....」
「あんまり無理しないでください。苦しかったら遠慮なく言ってください。」
「うん....ありがとう裕子....」
裕子はポケットからハンカチを取り出し、依奈に差し出した。依奈は軽く頭を下げると、そのハンカチを受け取り、目に押し当てた。
「八栗さん....やっぱり昨日のことがショックだったんですかね....警察署の時から姿見えなかったですよね。」
「そうだね....体調不良って形で休んでるみたいだけど、やっぱり堪えてるんだと思う....」
二人の空気が重くなっていく。
章太の手を汚させない、その為に清都を守ろうとしていたのにこの有様。依奈は歯を食いしばり、手を拳に変えていた。
依奈は自分の力の無さを怨み、自分自身を怨んだ。そして浮かび上がる章太の顔。清都を落とす時、章太のあの笑みを思い浮かべるとゾッとした。
生前の優しい章太は見る形もない。黒に染っていく姿を見て、悲しく、苦しくなった。
何やってのよ私は...章ちゃんがあんなの望むはずない....私が章ちゃんの立場だったら絶対に止めようとする。何をやってでも絶対に...
依奈はふと目線を変えると、駐車場の出入り口には真っ黒に染った制服を来ていた静華が立っていた。
「え?あれって...」