「食事してる時....お守りを横へ置きながら食べてるの見ました...清都君はお守りを今持ってないです!!」
依奈達はその言葉を聞いて固まった。まるで時間が止まったような空気感に清都の兄は戸惑っていた。
清都にとってお守りは最重要品。清都はいつも目に置いてある所でないと安心出来なかった。そして、突然の兄の訪問。それに動揺し、清都は外へ出る可能性を忘れ、お守りを置いてきてしまっていた。
そして、お守りの存在は兄の説教と母親がいるという危機感で消えていた。
「あ、あのぉ〜....だ、大丈夫っすか?何か手伝いましょうか?」
清都の兄の言葉で我に返った依奈は、その言葉を無視し、横を通り過ぎると走って清都の背中を追いかけた。それに続いて静華達も直ぐに追いかけていく。
薄らと見える清都の背中。だが、その背中はもうすぐに鳥居へ差し掛かる寸前だった。
「き、清都ぉ!!戻ってきて!!鳥居から出ちゃダメぇ!!!」
依奈は大声で呼びかける。聞こえないような距離ではなかった。だが、清都は石階段の下から見つめ、路肩駐車している車の前で腕組をして待っている母親のことでいっぱいだった。
「清都!さっさと降りてきなさい!!」
「うわ...マジでキレてる....何でだよ....別にそんなにキレることねぇじゃんかよ...だから嫌なんだよ家のルールなんて....」



