私の学園生活の方が大事だって言って聞かなかったのよ。母親は相手の気持ちを汲んでくれる優しい人だったのに。全く....誰に似たんだか...」
「あっ、静華は性格はお父さんに似てるんだね。」
「はぁ?どこがよ。あんな自分勝手な人の遺伝子なんて一ミクロンも入ってないわよ。」
静華は箸のスピードを進めて、口いっぱいに食べた。
依奈はそんな静華を見て、クスッと笑った。
「...何笑ってんのよ....本当に笑い事じゃないんだからね。」
「うん、ごめんね....でも、何か静華と会話するのはとっても楽しいよ。」
静華は目を見開き、少し頬を赤くした。目をキョロキョロと動かし、照れ隠しのように箸を進めた。
ブツブツ何かを言いながら、食いつくように食べている静華を見て、依奈はまた笑った。
ピンポーン!ピンポーン!
賑やかな食卓に響き渡るインターホン。全員の意識が扉方面へ向けられた。
静華の祖母は「珍しいわね」と呟くと、重い腰を上げて、玄関の方へ向かっていった。
玄関の方からは祖母の声と男性の声が薄ら聞こえてきていた。男性の声は初めて聞く。地域の人と思った依奈は、食事に戻った。
だが、心当たりがあるのか、清都は箸を止めて汗をダラダラと流していた。



