だが、章太が受けていたイジメの痕跡は残っていた。
液体と混ざって湿っぽく固まっている吸い殻、章太が暴力をふるわれていた地面だけ、砂が無かった。

依奈は章太の行方が気になり、ゆっくり現場跡に足を踏み込んだ。


「やっぱ...お前見てたかぁ〜。」


すぐ真後ろでボソッ聞こえる声に依奈は固まった。本当に驚いた時、人間は何も出来なくなると依奈は思った。

ゆっくりと肩に手をかけ、髪を触るその手があまりにも怖く気持ち悪く、依奈は吐き気に襲われた。

手をかけられた反対の肩からは息を吐く音が聞こえた。煙草と香水の混じった匂い、京吾は依奈の顔のすぐ横に顔を近付けた。



「ここで見た事....もし〜チクッたりしたら...お前とお前の家族の人生...終わらせるよ?」


「...え?」



「お前、俺の噂知らない?暴走族に関わってるって。あれ、本当だから。暴走族の上のやつと俺、すんごい仲良いんだ。ガキの頃からの付き合いでよォ〜。

そいつ、結構身内に対する人想いが強くてなぁ〜。身内の為ならどんな報復でもするやつなんだ。この前だって族の中の一人が三人にボコられたってだけで、その三人の歯を全部へし折った...あれ?抜いたっけ?忘れたけど....本当に怖いよなぁ〜。自分がもしそうなったらゾッとするぜ〜俺。」