「おら!早く飲めよ。じゃねぇと...クックック...分かってるよなぁ?うん、分かってねぇならやるだけなんだがよぉ〜。」
「うぉ!こいつマジで飲んでやがる!汚ねぇ〜!」
「ヤッバ!あははははははは!馬鹿だこいつ!ははははッ!」
三人の笑い声は依奈の耳に入り、心を傷付けていく。依奈は耳を塞いでも頭の中でリピートされる。依奈はポロポロと涙を流し、その場の雰囲気に耐えられなくなり、体育館裏から逃げるように離れた。
なんで...なんで私逃げてるの?でもしょうがないじゃん....私が助けられるわけないじゃん...昔とは全然違う...私が出たところで...行ったところで...
心の中で自分に言い聞かせながら、依奈は校門を抜けた。だが、抜けた直後に立ち止まる。
心の中の罪悪感、章太の弱々しい目が浮かび上がる。光は乏しく、助けを求めているが何処か諦めている目が依奈の良心を刺激する。
依奈は涙を流しながら、今来た道を引き返した。章太を助けようとかそういう考えは頭に浮かんだわけではなく、明確な目的もなく依奈は体育館裏まで走った。
忍び足で息を殺し、ゆっくりと体育館裏へ足を進める。さっきのような笑い声や騒動は聞こえず、人気配がしなかった。
依奈は恐る恐る、角から頭を出して見てみると、そこには誰もいなかった。



