清都は冷や汗をダラダラと流し、遂には涙や鼻水までこぼし、前までの清都とはかけ離れた者になっていた。

章太はそのままゆっくりと身体を沈めていき、頭の先まで暗い川の中へ入って目の前から消えた。
清都は全神経を足元へ移した。そして想像する。章太がどんどん近付いてくる。ゆっくりと近づいてきて、その足を掴み引きずり込む。そんな想像が妙にリアルに感じ、足に感覚があるとさえ勘違いしてしまった。

清都は足をバシャバシャと上下に動かして必死に逃げようとした。



「うわぁぁぁぁぁ!!やめろ!!やめてくれよぉ!!触らないでくれ!来ないでくれぇぇぇぇぇぇ!!」


そんな慌てふためく清都を見て、維真は両手を叩きながら喜んでいた。無邪気な笑顔、サーカスで凄い演技をした時の観客のように、維真は心の底から楽しんでいた。


「あはははははははは!!いいぞ清都君!今の君最高だよ!!今までの威勢はどこに行ったんだ!?なぁ!殺される前に殺すんだろ!?やってみせてよ!ねぇ!きよ」


清都は維真の途切れた声に気付かず、水しぶきを上げていた。すぐ下にいるであろう章太に抵抗していた。
だが、維真の声が聞こえなくなっているのにようやく気付き、維真の方へ視線を向けた。