怨返し─赦されない私の罪─


感情で本能を押さえつけている人類だから出来た事。良くも悪くも時に本能より感情を優先してしまう。

本能では絶対見るなという拒否反応を出し、本人も意識はしていないが、ゆっくりと感触を感じる右足へと目線を移した。


親指と人差し指の間にあった感触の正体は目玉だった。
血なのか眼球そのものが赤黒く染まっていて、黒目は前のようにこっちを見ているのではなく、上下左右に壊れた玩具の様に激しく動いていた。


「ひっ!ひぃぃぃぃいい!!!」


依奈は毛布の殻から出て、腰を抜かしながら部屋のドアまで下がった。
毛布が邪魔で見えないがさっきまで目玉がある場所を凝視しながら、まるでギックリ腰になったかのように、手だけをドアノブまで伸ばした。

すると、ドアが外側からドン!と誰かが叩いた音がした。
依奈はビクッと身体を跳ねさせたが、その場を動かずドアの方を怪しげに見ていた。


「え?...お、お母さん?」


呟くようにドア越しの人物に話しかけた。
応答はなく、代わりにまたドンッ!と強く叩かれた。


ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!


「ひっ!」