十五分も何もせずに寝かせてあげたのですから、もう起こしてもいいでしょう。
しかしあなたはそれをしようとしません。

起こそうと、ブランケットのかかる彼女の肩に手を伸ばすことも何度かありましたが、少し考えては、それをやめるのです。

起こしたら、これでさよならになるからでしょうか。
あなたはまさか、彼女とさよならしないつもりなんですか?

あなたが今日のことを、どう思っているのかは分かりません。少なくとも、彼女のことは嫌いではないのでしょうし、むしろあなたにしてはかなり好意的に接していました。

でも、あなたは、来る者拒まず去る者追わずというか、いやそれより酷い、来る者は厳選し去る者は追わない、という人のはずです。

数時間前に、それもヒッチハイクで出会ったジャージ姿の女性を、まさかどうにかするつもりなのでしょうか。

だとしたら、すごいことです。

もうすぐ二十分になります。あなたはついに、彼女を起こすために動き出しました。
まずは彼女のシートベルトを外すため、寝ている彼女の手を少しずらします。戻るシートベルトの金具で彼女が怪我をしないよう、外された金具部分をすぐに捕まえ、ゆっくりと上へ戻していきます。

「……藍川さん」

あなたはまた、甘く囁くような声で彼女を呼びます。