フルネームを呼び引き止める。
「何をする気だ?」
私の声が強張る。
この人が無事で帰すなんて到底思えず、気が付いたら睨んでいた。
「俺の仲間になる気はあるか」
「は」
乾いた笑いにも呆気にとられる声にも取られる私の声は上枳に見事に吸い取られる。
「副総長を開けてある」
「は?」
「滝留柚花」
いきなり本名を突かれ、咄嗟に顔を上げた。
「もう一度聞く、お前は俺の仲間になる気があるかよ?」
「そんないきなり言われても」
「そ、なら来い」
「は?」
聞いてた?と言わんばかりに眉を顰める。
彼には通じないみたいで、私の腕を引きずんずんと進んでいく。
「いっ……」
さっき殴られた頭がどんどん痛みを増す。
「うわっ」
気が付いた時には体勢を崩し、地面に叩きつけ付けられる前に私は意識を手放した。
午後8時、何かが崩れる音がした。

