だけど、結は、俺の腕を振りほどかない。

そんな風にしたら、期待するじゃん。

「お前、好きな男以外に、抱きつかせるなよ。
好きじゃないなら、抵抗して振り払えよ。」

俺は結の頭に頬を寄せてそっと言った。

結は、その言葉で我に返ったのか、慌てて俺の腕を振りほどいた。

そして、

「だったら、天がそんな事、しなきゃいい
じゃん。
天のバカ!」

と言った。

「だよな。ごめん。」

俺は、それ以上、何も言えなかった。

「天? どうかした?」

結が、俺を見上げて言う。

「別に。
………さ、コアラ行こうぜ!」

俺は、気持ちを切り替えて、いつものように言った。

だけど、結の目は、不思議そうに俺を見ていた。