郊外にいるため、品川までは1時間以上かかる。

俺は電車を乗り継いで品川に向かった。

伊藤から19時の新幹線に乗ったとメッセージが届いた。

俺は、ホームで待つ。

待ちながら、考える。

伊藤にどうしてやるべきか。

俺にできる事なんてない。

不器用な俺は、傷ついた女を上手く慰める事なんて、できる気がしない。

それでも、伊藤をひとりで泣かせたくはなかった。


21時半。

新幹線が到着すると、降車する人混みの中から、俺を見つけて歩いて来る伊藤が見えた。

明らかに目が赤い。

こいつの事だ。

きっと朝一で大阪に向かったんだろう。

彼氏に会える事を楽しみに新幹線に乗って、彼氏のマンションで夕方まで待ち続けて、心の糸が切れて、俺に電話して来たんだろう。

「天… 」

俺は、歩み寄って来た伊藤をそのまま抱きしめた。

華奢な小さな体。


………やっぱ、ダメだ。

こいつが、彼氏が好きで、離れても一生懸命思ってるのがかわいいと思ったから、応援しようと思ってた。

だから、会いに行けって言ったけど、やっぱり、俺、こいつが好きだ。



結…

もう、俺にしとけよ。

俺がお前を必ず幸せにしてやるから。