「もしもし? 伊藤? どうした?」

『天…
海翔がいない。
海翔に会えない。』

電話の向こうで、伊藤が泣いていた。

「伊藤、今、どこ?」

『海翔のマンションの前。』

「電話は?」

『出ない。
初めは、呼び出し音が鳴ってたのに、途中で
切られて、もう、それも繋がらない。』

は!?
彼女の電話に出ない理由なんて、浮気しか考えられない。

「………帰って来い。
品川で待っててやるから、帰って来い。」

『うん。』


俺は、席に戻ると、

「悪い、急用ができた。
飯だけ食べて、先、帰る。」

そう言って、早く出来そうなカレーを注文すると、さっさと食べて、店を出た。