「は!?
だって、普通、引っ越しの片付けとか、
足りない物の買い出しとか、2人でするだろ?
お前だって、会いたかったんじゃないの?」

「うるさい!!
会いたいに決まってるじゃん!
でも、来なくていいって言われたら、
行けないでしょ!」

しまった!
また、余計な事を言って、泣かせるところだった。

「ゴメン…

だけど、伊藤、我慢しすぎ。
付き合ってんだろ?
そんなの気にせずに、『来ちゃった!』って
言えばいいんだよ。
男は結構、そういうの、嬉しいと思うけどな。」

俺がそう言うと、伊藤の瞳が揺れた。

「じゃあ、今週末はそうしてみる。
ありがと、天。」

そう言って、頑張って笑う伊藤は、少し痛々しかった。

こいつの彼氏は、なんで彼女にこんな顔をさせとくんだ?

こいつは、素直に笑った顔が1番かわいいのに。

俺なら、絶対にこいつに寂しい思いなんてさせないのに。



………いや。
別に、俺が彼氏になりたい訳じゃないけど。



俺は、気持ちを切り替えて、仕事に取り掛かった。