社長はそんな事言うけど口説いて来たことなんか一度もない
初日に一瞬そんな話になった程度だ
それからは極真面目に仕事の話ばかり

たた、変わった事と言えば二人の時は"優ちゃん"と呼ぶ様になった
「誠の嫉妬する顔が面白くて」なんて言ってたけどよくわからない




「優………帰りとか大丈夫か?」

「大丈夫ですよ」


きっと、社長から聞いたのだろうな
誠さんにも言うって言ってたし


「あの若さで社長だからな
あいつもそれなりに苦労してる
社内にも外にも敵は多いからな」

「社内も?」

「あぁ、納得できない上層部もいるよ
ちょうど俺がここに来ることになったのはあいつが社長になったからだし
先代が倒れて、急だったから」

「そうなんですか?
それでも引き継いで立派にされてるのは凄いですね」

「本当、あいつは昔から奔放なくせに器用なヤツだったな
アイツも調査してみるとは言ってたけど優も気を付けて」

「はい、みのりさんも色々気に掛けてくれてます」

「あぁ、何かあれば相談したら良いよ」

「はい」


視線の正体は全然わからないけど、誠さんも、会社にはみのりさんもいてくれる

美幸も会社が違うから同じ会社に私のことわかってくれている人がいるのは安心だって言ってた

誠さんの幼なじみだしホッとする
社長もきっと悩んだりしてるんだろうな………
全然知らなかったな


誠さんの腕の温もりに次第に緊張も解れて瞼が閉じていった