「司どうする?」


洋介が優ちゃんのスマホを差し出した
ひっきりなしに鳴っている
もちろん相手は誠


「遅すぎるでしょ!あいつ何やってたの?
私が優ちゃんと会ってから一時間よ?
まさか、さやかさんとホテルでも行ったんじゃないでしょうね!」

「司………」


プリプリ怒る私を洋介は宥めてきた
わかってる
わかってるよ


「優ちゃんの涙を思い出すと、誠もちょっとは困ればいいのよ………」

「司………大丈夫だよ
誠も過去に向き合わないといけなかったんだよ
優ちゃんには辛い想いさせちゃったけどさ
司………俺、出るよ」


そう言って、洋介が電話に出た

最初、男が出たことで誠が怒り狂ったんだろう
洋介は必死で「洋介だって!」と言っていた
埒があかなさそうだったので、私が替わった


「誠………」

「え?」

「あんたは親友の夫婦の声もわからないバカ男なの?」

「司?え?どうして………」

「考えたらわかるでしょ、早く来なさい!」


何か言ってたけどぶちっと切ってやった


「誠、優ちゃんちの前にいてるっぽかったよ」

「だったら30分くらいかな?」

「タクシーで15分」

「早々、タクシー捕まらないでしょ?
あの辺駅まで出ないとタクシー通らないし」


悟の店の近くって言ってたはず
少しくらい慌てたらいいのよ
私はもう一度優ちゃんの頭を撫でた

玄関のチャイムが鳴ったのは10分後だった