「お前、いい女だな」


後ろから声が聞こえて驚いて振り返ればシャワーを浴びたばかりの課長にドキッとした

男性なのに私より色気あるって!
やっぱり神様は不公平だ!


「何を言ってるんですか、もう出来ますのでどうぞ」

「あぁ、ありがとう」



課長はゆっくりと椅子に座った
不思議な感じ
あのイケメン課長が目の前でご飯を食べてるんだから


「美味いな」


そう言いながらしっかりと食べきってくれた
食後のコーヒーを入れながら、この後の話を想像した
ちゃんと、話をして受け止めないと


「どうぞ」

「ありがとう」


コーヒーの香りに気分が落ち着いてくる
一口飲んで息が漏れた
緊張していたのだろうか


「優」


優しく名を呼ばれて彼を見た
抱かれてる間も何度も呼ばれた名前
彼の事も「誠さん」と何度も呼んだ
もう呼ばれないと思っていた「津川」といつもの関係に戻るのだと



「悪かった」


謝られた瞬間、空気が冷えた気がした
わかっていたはずじゃない
一夜の過ちでしょ?


「違うから!」


課長はそう言って俯いてしまった私の視線を合わせた
頬に触れる両手が少し震えている
それは、昨日の彼を思い出させた



「抱いた事は謝らない
後悔なんてしてないからな!
謝ったのは嘘になってしまったからだ」

「うそ?」

「女を抱けない、なんて言ったのに」

「あ………」



昨日の情事を思い出して視線をさ迷わせた
は、恥ずかしい


「目を見てくれ
嘘じゃないと感じて欲しい
俺は………」


課長は、真っ直ぐに言葉を紡いだ



「ずっと好きだった」