「結局、柊とは付き合わなかったのかよ」



帰宅後、呆れた顔であたしの前に立つ匠。



「付き合ってないよ」


「なんでだよ。誤解、解けなかったのか?」


「解けたよ。匠とは付き合ってないって言った」


「なんで付き合わないのか謎だな」



首を傾げながら、ソファーに座る。



「ちょっと、分からなくて.......」


「分からない?」


「柊くんのこと、好きなのか.......元々好きだったのか」


「何言ってんだ。お前はずっと柊のことだけ好きだったろ」



匠の目が見開いて、あたしの頭をポンっと叩く。



「うん、そうなんだけどね.......」



でも、いまあたしが好きなのは、どう足掻いたって匠なんだ。
柊くんじゃない。

だからといって、いまはまだそれを伝えるつもりはない。
こうして、好きな人とひとつ屋根の下で暮らせるなんて、ないことなんだから。

あたしは、今を楽しむって決めたんだ。



「あとから後悔してもしらねーぞ?」


「うん、しないから大丈夫」



匠を好きな気持ちをもって、柊くんと付き合ったほうが絶対、後悔するってわかってるから。