「なにやってんだよ!このままじゃ、本当に諦めちゃうぞれお前のこと!」



あたしの背中を押す。



「だ、って.......あたし」


「いいから!はやく!」


「う、うん.......」




あたしが好きなのは匠なのに。
それを知らない匠は、必死に柊くんのもとへ行かせようとする。

そんな柊の勢いに負けて、あたしは走り出した。

どっちでもいい。
でも、柊くんが傷ついているのだけはたしかだから。



「柊くん!」



走って、みつけた柊くんの背中に勢いよくぶつかる。



「ちょっと、なっちゃん!痛いよ」



可笑しそうに笑う柊くんだけど、その笑顔はやっぱり寂しそうだ。



「ごめん、柊くんにたどり着こうと必死で.......」


「はは、本当に昔から変わってないや」



フッと笑って、あたしの頭を撫でる。



「ごめんね、この前キスなんかして」


「.......ううん」



柊くんとのキス、ずっと夢見ていたんだ。
そんな夢みたいなキスだったはずなのに。嬉しかったはずなのに。

変わったのは、あたしの気持ちだった。