「おい」



帰ってくるなり、ドスンと野球道具の入ったカバンを置いたかと思うと不機嫌極まりないという表情の匠。



「え?なに?」



朝も学校でも、部活に行く前だって普通だったはずだ。
どうして、帰ってきたかと思ったらこんなにも機嫌が悪そうなのだろうか。



「お前、なんで断ったんだよ」


「へ?なんの話し?」



そんな仏頂面でそんなことをいわれても、わからなくて首を傾げる。




「だから、柊のこと!」


「あ.......」



昨日、柊くんに「本当はずっと好きだった」と言われた。
でも、あたしは気づかないうちに芽生えてた気持ちに逆らうことができなくて、柊くんのことを振ったような形になった。



「お前、柊のこと好きなのになんでだよ」



はぁっとため息をついて、ソファーに座る。



「だって、彼女.......「別れるって言ってたろ」



あたしの言葉なんか、聞く耳を持たない。

そもそもあたしが柊くんの告白を断ったからって、匠がこんなに不機嫌になる理由がわからない。